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Making of 3D

[メイキング]サンジゲン 3Dについて

"SANZIGEN": 3D ANIMATION

 黒衣マトを中心とした濃密なドラマが展開する『ブラック★ロックシューター』だが、もうひとつ見逃せないポイントは、「虚の世界」で繰り広げられる、ブラック★ロックシューターたちの壮絶なバトル。 このシーンがすべて、フルCGで制作されている……と聞いて、きっと驚く人も多いはずだ。
 制作を手がけるのは、数多くのアニメ作品にCGで参加しているサンジゲン。
 また「CG特技監督」のクレジットで、これまで『天元突破グレンラガン』などを手がけてきた今石洋之が全体の監修を務めている。 今石が監督を務めた前作『Panty & Stocking with Garterbelt』でもタッグを組んだ両者だが、 この『ブラック★ロックシューター』では、一見、手描きかと見紛うばかりのキャラクター表現を実現している。 本作への参加のきっかけを、サンジゲン代表の松浦裕暁は、こう語る。

 「もともとOVA版にも、10カットほど参加していたんです。 そのときに作画参考用ということで、仮のCGモデルを置いて動かしてたんですね。 で、これをもっとブラッシュアップすれば、本編でもそのまま使えるよね、という話になって……。 冗談交じりで「虚の世界を全部、CGでやれば面白い」みたいな話はしていたんです。
そのときはまだ冗談だったんですけど、テレビシリーズがいよいよ動き始めるという段階になって、 グッドスマイルカンパニーの安藝さん(貴範/本作のプロデューサー)から「本当にやってみないか」と」

 実際に作業がスタートして、まず最初に着手されたのは、ブラック★ロックシューターら、「虚の世界」のキャラクターのモデリング。 通常のアニメ制作では、キャラクター原案から作画用のキャラクター設定を起こすという作業が必要になる。 しかし、下の掲載した「キャラ設定」を見てもらえばわかる通り、hukeによる原案からじかに、キャラクターのCGモデルを制作。 目標は「hukeさんの絵をそのまま動かすこと」だったという。

↑一番左が、hukeによるブラック★ロックシューターのキャラクター原案。これをもとに、3Dモデルが制作された。モデルの縁の描線を手描き風に見せるなど、セルアニメ的な見せ方を取り込んでいる。

 モデルの制作と並行して、「テスト映像」の作業も進められた。 このテストムービーは、CGシーンをどのように見せるか、その見せ方を検討するもの。 キャラクターアクションの方向性やカメラワーク、テクスチャーの使い方や色の方向性、世界観など、ビジュアルの「見せ方」をテストとして制作するものだ。

 あくまで「テスト」とはいえ、制作されたカットのクオリティは非常に高い。 実際、この『ブラック★ロックシューター』では、テストムービーの一部が、ブラッシュアップされてそのまま本編のオープニングにも使われている。

↑本編制作前に制作された「テスト映像」。制作を担当したのは、CGメインアニメーターひとり、石川真平。 吹き飛ばされ、地面を転がるブラック★ロックシューターのカットだが、このアクションは本編の対チャリオット戦の場面に使われた。

↑同じく「テスト映像」から。こちらも石川真平が担当。 煙のオブジェクトを複数組み合わせて動かすことで、ユニークな爆発の効果を生み出している。

 本編制作では、まず絵コンテに基づいて、カットの構成を決定。 キャラクターのアクションとカメラワーク、そして背景の制作が同時並行で進められる。 なかでも驚かされるのが、縦横無尽なカメラワークだろう。特に第1話の冒頭、ブラック★ロックシューターの瞳のアップからカメラが引いて「虚の世界」の全景、さらに飛び降りる彼女が銃を発射するアクションまで、 一気に見せる長回しは、CGでなければ作れないダイナミックなアクションカット。グイッと手前に伸ばされる腕のデフォルメなど、教えてもらわなければ、CGだとわからないアクションが頻出する。

↑今石による絵コンテをもとに、各カットごとに制作が進められていく。

↑絵コンテをもとに、キャラクターはもちろん、背景も含めて、CGモデルを組み上げる。こうした長回しのカメラワークはCGならでは。

↑上のムービーをさらにブラッシュアップ。今石によるチェックとディスカッションを数度繰り返し、完成形へと近づけていく。

↑さらに撮影効果を加えて、完成。CGならではのダイナミックなカメラワークが印象的だ。

 また今回の作品では、これまでサンジゲンが手がけてきた作品のなかでも、特に「キャラクター表現」に力が入れられている。 ふとした仕草やちょっとした表情、CGが苦手としてきたところにも果敢に踏み込み、一定の成果を出している。メインCGアニメーターのひとり、名倉晋作はこう話す。

 「派手なアクションって、じつはそんなにハードルが高くないんです。むしろ表情で見せるお芝居の方がリスクが高い。 単純に絵コンテに書かれているものを作ればいいかといえば、そういうわけじゃないんです。 例えば、カメラをあおるとどんなふうに見えるのか、アニメ的に見栄えがよくするには、どんなカメラワークにすればいいのか。そこを考えながら作るのが、一番大変ですね」

 CGでは、コンピュータ上に仮想の空間を用意し、そこにモデルを置いて、照明を当てて撮影する。逆にいえば、それだけで「アニメ風の絵」が、誰でも作れてしまう。そこにCGの陥穽がある。
 『ブラック★ロックシューター』でサンジゲンが挑んでいるのは、まさに「それなりにできてしまう絵」を、いかにアニメに近づけるかというハードルだ。 松浦は、サンジゲンの絵作りについて、「意識しているのは、作画のアニメーターの方たちの作り方」なのだ、と話す。

 「アニメーターの方たちって、真っ白の紙に鉛筆で線を引いていくわけです。つまり、自分の狙った絵しか描かない。 カメラがあおったときに、どんな絵が可愛いのか。どういうカメラ位置ならカッコよく見えるのか、それを考えながら、絵を作っていく。僕たちに一番必要なのは、 そういうアニメ的な意識というか、アニメーター的な姿勢なんですよ。そういう意味では、ウチ(サンジゲン)もまだまだ。 もちろん、できる人間は増えてきてるんですけど、まだまだ道の途中だと思っています」

 これまでも数多くのアニメーション作品で、ユニークなアクションを手がけてきた今石が参加することで、「手描きアニメならではのエッセンス」を吸収し、 さらなる高みを目指す『ブラック★ロックシューター』。後半戦に入り、さらにドラマティックに展開するマトたちの"葛藤"とともに、大胆さを増すCGシーンにも注目いただきたい。

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